14

道央

有限会社佐々木ファーム 取締役専務  村上 さゆみ さん【洞爺湖町】

大地の生命力で育てる、無農薬・無肥料の「ありがとう農法」

1972年生まれ、洞爺湖町出身。佐々木農園に生まれる。大学卒業後、大手家具メーカーに就職。結婚後、夫・貴仁さんの希望で佐々木農園の後継者として1997年から就農。1999年に有限会社佐々木ファームを設立。早逝した長男のほかに長女、二男、三男の母。

印刷用PDF

きっかけ
 2005年に4歳の長男を突然死で亡くし、命について考えたのがきっかけでした。その頃、私たち家族は農業を諦めて出ていくことを決めていて、引っ越しは1週間後という夜、息子の心臓が止まりました。名前は大地といい、よく「ボクが家族を守るから大丈夫!」などと話していました。絶望しました。でも「大地は亡くなったけど、ここの大地になったんじゃないか」と思えて、もう一度この土地で、命を育む農業を目指そうと決心しました。ありがとう農法という名称は「消費する食から感謝の食へ」を表しています。
苦労
 夫が経営移譲を受けた2010年から、草や微生物と共存する、命を奪わない農法の実行に移りました。農地の面積は14ヘクタールあるのですが、3年目を迎えた時、この農法にしっかりと取り組むために、半分の畑を休ませ7ヘクタールでやることを決めました。そのために収入が3分の1になってしまい、本当に苦しい時でした。保険を解約し、生活もぎりぎりまで切り詰めました。クラウドファンディング(インターネットで多数の支援者から寄付等を受ける仕組み)に応募したのもこの時です。そこで目標額以上の、本当にたくさんのご支援をいただいたことで、次の年も農業を続けることができました。心から感謝しています。
満足度
 2013年から全面積を自然栽培に移行し、2015年にやっと黒字化しました。栽培品目も年々増えて100種類を超えました。お客様はレストランなどとの直接取引で、その方々がクチコミで紹介してくださり、今は120社以上になっています。この6年間、志を同じくして支えてくれたスタッフたちは、最盛期で15人ほど。20代から40代で女性が圧倒的に多いです。お客様が私たちに求めていることも「そのビジョンを達成しなさい」ということ。お客様とスタッフに本当に恵まれていると感じています。
これから
 非営利の社団法人を設立しようと準備を進めています。法人名は「大地が教えてくれたこと」。一農家の利益ではなく、農業界全体に貢献できるような団体をつくり、運営していきたいと考えています。農業がなぜ存在するか、それは国民の食を、命を守っていくため。永続可能型地球サイクルの食部門を担うのが農業だと思います。しかし「そのために何をするか」を話し合う場が農業界にはありません。100年後にも残していける農業のスタイルを、農業者の方々と共に考え、行動していきたいですね。
  • 村上 さゆみさんイメージ1
  • 村上

北の☆女性たちへのメッセージ

人には皆、その人だからこそ存在する意味があると私は思います。あなただけにしかできないことがあるから、今、あなたが存在する。一人でも多くの方にそれを見つけてほしい。「自分の命を輝かせて、得意なことで人の役に立つ」ことは、女性だからこそできると思います。

取材年月日:
2016年1月13日