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道北

めん羊工芸館くるるん 代表  辰巳 美恵 さん【士別市】

毛糸と時を紡いで技術の伝承を

1943年生まれ、士別市出身。士別高校を卒業し、消防職員の夫と結婚。3人の娘に恵まれる。1982年の「サフォーク研究会」の立ち上げ時のメンバーで2009年から1期会長を務める。2009年には、めん羊牧場がある「羊と雲の丘」に「めん羊工芸館くるるん」を開設。木製の糸車や織機などを設け、手づくりの羊毛製品の製作指導にあたる。

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きっかけ
 幼いころに母親から編み物を教えてもらいました。長女だったので、冬になると弟たちの靴下や手袋を毛糸で編んでいました。1970年代になると、士別市が直営で羊の放牧場を開設。食用サフォークを観光資源にする研究が始まりました。そんな中、青年が中心となり、1982年に町おこし団体「サフォーク研究会」を設立。私は手芸が得意だったので、春に牧場で刈る羊毛を使ってマフラーを作れないかと考え、翌年に同研究会の部会として、羊毛加工グループ「くるるん会」を立ち上げました。
苦労
 士別市は羊・サフォークのまちとして、認知度が高まってきましたが、そこに至るまでさまざまな努力がありました。くるるん会では、牧場で刈り取った羊毛を洗浄、染色し、毛糸玉にするまで、多くの方に協力を頂いて試行錯誤を重ねてきました。さらに毛織り技術の向上を図るため、自ら東京の専門学校で講習を受け、士別市に戻って仲間に指導しました。札幌市のデパートでの展示販売会では、羊毛製品の素晴らしさを紹介したり、多くの方に工芸体験をしてもらえるよう、根気強くPRを重ねていきました。
満足度
 2014年は羊年だったので、行政と市内の商工団体が集まって「サフォークランド士別プロジェクト」と称した各種イベントを催しました。2015年11月15日には、市民ら約330人が集まり、くるるん会員の作品を着用した「ニットファッションショー」を開催。地元の高校生がモデルになるなど大盛況でした。近年、夏になると、東京都など首都圏から道北の周遊観光の1つとして、工芸館に立ち寄り手芸体験をされます。さらに外国人観光客も訪れるようなるなど、今後の展開が楽しみになってきました。
これから
 少子高齢化社会を迎え、士別市も高齢者が多くなってきました。この工芸館は、そんな高齢者の方々が気軽に集まれるような空間にしたいと思っています。毛糸玉を触っていると、自然と心が安らぎ、会話が弾んできます。さらに工芸館内にある木製の糸車や織機などが簡単に使えるよう、技術の伝承を図り、もっと若い世代に毛糸の紡ぎ方を教えていきたいです。小中学校の研修旅行の一環として、工芸館に立ち寄ってもらえるよう、地元の観光協会などと連携しながら集客に努めていきます。
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北の☆女性たちへのメッセージ

手づくりのマフラーを大事な人に渡したことはありますか?昔と違って、若い女性が編み物をする機会が少なくなっています。1度でも時間をかけて、毛糸玉から編んでみてください。完成した時の達成感は最高ですよ。若いお母さんも子どもに手袋や靴下を編んであげると、あなたの愛情はきっと子どもに届きますから。

取材年月日: 2015年12月17日